(論点)電話口での相談について

2024年09月03日

今までも、何度かいきなり電話がかかってきて、「身の上」のお話をし始める方がいらっしゃいます。アイリスの無料相談は、原則予約制です。ご都合の良い日時を確認の上、相談業務を実施しております。しかし、差し迫っているのか、いきなり相談される方がいます。守秘義務等がありますので、あまり詳しい内容は言えませんが、概要を見ていただいて、緊急度合いを測っていただきたいと思います。相談内容をディすることが目的ではなく、あくまでも原則通り予約を取っていただきたいということで、少し内容を開示いたします。

目次

1.「あの司法書士の先生は信用できない」

2.「もう3か月も放置されているので、先生にお願いしたい」

3.「いきなり書類が司法書士から届いた。あなた方はこんなことをするのですか?」

4.無料相談での回答に保証を求めてくる

5.まとめ


1.「あの司法書士の先生は信用できない」

 ある日電話が鳴り受け答えをすると、第一声だったセリフがこれです。はじめ何のことを言っているかわからず、何度か話を聞いているうちに、次第に相談している方がお願いしている司法書士の先生の、特にコミュニケーション不足についての愚痴でした。

 さすがに、私から何かできるわけでもありませんし、直接、その先生に言っていただくようにして、それでも改善が見られない様なら、契約の解除も検討してみてはどうかというアドバイスをいたしました。勿論、相談者の方は、電話番号はわかるものの、どこに住んでいる誰かもわからない上に情報が少ない状態でのアドバイスですので、仮に私の言った通りやって不利益を被ったとしても、私は保障できない旨を伝えました。

2.「もう3か月も放置されているので、先生にお願いしたい」

 こちらも、実際に予約をいただいて事務所に来訪していただいた方の相談です。あることが理由で、初めに紹介された司法書士の先生が、登記申請を渋られているみたいでした。その後、その問題が解消しているにもかかわらず、手続きを進める意思を感じられないため、別の先生にお願いしたいということで私の事務所に来られました。権利証等の重要書類を預けたままということでしたので、取り返して、依頼をお断りするようにアドバイスをしました。放置期間は3か月。内容を確認すると、なぜ登記申請しなかったのか理由はわかりましたが、すでにその問題は解決しているにもかかわらず、数か月にわたり連絡をしなかったという点が、専門家としてどうなのかなと思いました。当然、同情すべき部分はありましたので、その部分は理解してあげてほしい旨を伝えました。

3.「いきなり書類が司法書士から届いた。あなた方はこんなことをするのですか?」

 県外の方から電話口でいきなり言われた言葉です。「その司法書士の先生に言ってください」と言いたくなるところ、丁寧に対応しながら、そのようになった経緯を聞くと、弁護士案件でしたので、弁護士に相談するようにアドバイスをしました。しかし、以前同じ案件で弁護士に相談していたがいい結果が出ないと言われましたので、「その方ではない弁護士に相談してください。」とお話をしました。

4.無料相談での回答に保証を求めてくる

 無料相談で提供していただける情報は、漏れがあるケースが多いです。なぜなら、全員というわけではありませんが、相談に来られた方の傾向として、自身にとって有利な情報は強調してお話されますが、不利益になる情報は積極的に話される方は少ないです。ですので、ある程度時間をかけて提供している情報から、整合性が合わない部分についてこちらからの質問でその穴を埋めていく作業が必要になります。

 また、整合性が取れすぎている場合、相手の方に連絡を取って調べる場合もあります。勿論それでは、相談者の方に不利益が大きい場合は控えますが、事実確認はできるだけするようにしております。

 しかし、中には、限られた情報しか提供していないのにもかかわらず、無料相談でアドバイスした内容を保証しろと言ってくる方もいらっしゃいます。そう言われると、アドバイスを取り下げて、お帰りいただくようにしております。

 よくあるのが未登記建物を費用かけてでも登記したほうがいいのかこのまま放置をした方がいいのかといった内容で、司法書士に「登記なんかしたら費用は掛かるし相続登記義務化にもひっかるからやらない方がいいよ。」と言わせたいのでしょうが、しかし、専門家としてそうわけにはいきません。判断するのは、相談者の方ですし、そもそも未登記の違法状態を作出したのは、亡くなった被相続人の方なので、私は関係ありません、というようにしております。また、アドバイスの内容を実行するかしないかの判断は、相談者にお任せしております。無料相談で、そこまで責任は負えません。

法令上「不動産の表題部に記録されている所在、地番、家屋番号、地目、地積、構造、床面積などについて変更が生じた場合や新たに建物を新築した場合には、1か月以内に表題部に関する登記を申請しなければなりません。 これは、不動産登記法という法律上義務付けられているものであり、違反すれば10万円以下の過料に処されることになっています。」

5.まとめ

 アイリスは予約制でしか対応できないから、予約してからじゃないと相談業務はやらないと言っているわけではありません。相談業務の緊急度合いは、相続放棄などの期限の定めが法定されているようなケースだと、すぐにでもアクションを起こさないと手遅れになるケースがあります。御事情をお話しいただき、その内容により対応するようにしております。また、ググればわかるような話でも、パニックに陥ってしまっていて正常な判断ができなさそうな場合も、対応するようにしています。まあ、パニックに陥るといった原因は、期限が迫っていることも含まれますが。私も日々業務がありますので、お客様に迷惑はかけられません。ですので、私自身で対応するのではなく、今後どのような手続きをするために誰に相談すればいいのかまで、お話をするようにしております。じっくりお話を聞いて対応できない以上、ググった結果以上の内容は期待できませんが、この程度の情報について「今まで2時間、電話して問い合わせ続けましたが、ここまでの情報すらいただけませんでした。」といわれたこともあります。すでにその方は10名以上の士業の方に電話したそうです。お金にならない案件であることは、聞けばわかります。でもね、士業の存在意義について今一度見直してみてもいいのではないでしょうか。

(司法書士法)

「(司法書士の使命)第一条 司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」

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