(論点)遺言書がある場合とない場合の相続登記手続きの違い

2024年11月22日

相続登記において、遺言書がある場合とない場合では、必要書類や手続きの流れに違いがあります。特に遺言書がある場合、手続きは比較的スムーズに進むことが多く、一方で遺産分割協議を伴う相続登記では、相続人全員の合意が必要なため、手続きが複雑化する可能性があります。以下では、遺言書がある場合とない場合の手続きについて、必要書類や注意点を修正・追加しながら比較します。

目次

1. 遺言書がある場合の相続登記

2. 遺言書がない場合の遺産分割協議による相続登記

3. 比較とまとめ


1. 遺言書がある場合の相続登記

 遺言書がある場合、特に公正証書遺言であれば、手続きは非常に簡便です。遺言書に従って、相続人や財産の帰属が指定されているため、遺産分割協議を行う必要がありません。また、自筆証書遺言の場合も同様ですが、家庭裁判所での検認手続きが必要です。ここで重要なのは、遺言書がある場合、相続人を確定するために出生から死亡までの戸籍謄本を提出する必要はないという点です。被相続人の死亡が確認できる除籍謄本のみで手続きを進められます。

必要書類

遺言書:公正証書遺言の場合、遺言書自体がすでに法的な証明力を持っているため、検認手続きは不要です。自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認証明書が必要です。この検認手続きは遺言書の有効性を確認するためのものであり、内容の妥当性や遺言の適正さを審査するものではありません。

被相続人の除籍謄本:遺言書がある場合、被相続人の死亡を証明するために、死亡が確認できる除籍謄本が必要です。遺言書に基づき遺産の帰属が明確にされているため、相続人全員を確定する必要はありません。

相続人の戸籍謄本:遺言書に指定された相続人の戸籍謄本が必要です。これは相続人が遺言書に従って指定されていることを証明するためです。

不動産登記簿謄本:相続する不動産の登記簿の写しを取得します。

固定資産評価証明書:相続税や登録免許税の計算に使用されるため、不動産の固定資産評価証明書が必要です。

手続きの流れ

必要書類の準備:遺言書(自筆証書遺言の場合は検認証明書含む)や被相続人の除籍謄本、相続人の戸籍謄本などを用意します。

登記申請書の作成:遺言書に基づいて、相続人が相続する不動産の登記申請書を作成します。

法務局へ申請:相続する不動産の管轄法務局に申請書を提出し、登記名義を変更します。

手続き上の注意点

検認手続きの必要性:自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、家庭裁判所での検認が必要です。検認手続きが完了しない限り、相続登記の手続きを進めることができません。

遺言執行者の指定:遺言書に遺言執行者が指定されている場合、相続登記は遺言執行者が行います。遺言執行者が指定されていない場合は、相続人が直接手続きを進めます。

2. 遺言書がない場合の遺産分割協議による相続登記

 遺言書がない場合は、相続人全員が話し合いで遺産の分割方法を決定し、それに基づいて相続登記を行います。この場合、相続人全員の同意が必要であり、合意が得られなければ家庭裁判所での調停が必要になることもあります。さらに、相続人全員を確定するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を揃える必要があり、手続きが煩雑になることがあります。

必要書類

遺産分割協議書:相続人全員で協議を行い、分割の合意内容を記載した協議書を作成します。相続人全員の署名・実印が必要です。

相続人全員の印鑑証明書:遺産分割協議書には相続人全員の実印が押印されている必要があり、その証明として印鑑証明書が必要です。

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本:遺産分割協議においては、相続人全員を確定する必要があるため、被相続人の出生から死亡までの戸籍を揃えます。これは、全ての相続人が確定されていることを証明するためです。

相続人全員の戸籍謄本:相続人全員の現在の戸籍謄本も必要です。

不動産登記簿謄本:相続する不動産の登記簿の写しが必要です。

固定資産評価証明書:相続税や登録免許税の計算に使用されます。

手続きの流れ

遺産分割協議の実施:相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作成します。

必要書類の準備:相続人の戸籍謄本や被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、印鑑証明書などを用意します。

法務局へ申請:遺産分割協議書に基づいて登記申請書を作成し、法務局に提出して相続登記を行います。

手続き上の注意点

相続人全員の合意が必須:遺産分割協議は相続人全員の合意が前提です。合意が得られなければ登記手続きが進められません。場合によっては、家庭裁判所での調停や審判が必要になることもあります。

相続人の確定に時間がかかる場合がある:相続人の一部が行方不明だったり、連絡が取れない場合、相続人の確定や書類の収集に時間がかかることがあります。この場合、法定相続分に基づいて一時的に登記を行うことも考えられます。

3. 比較とまとめ

 遺言書がある場合と遺言書がない場合の相続登記手続きの違いをまとめると、以下の点が挙げられます。

時間と手間:遺言書がある場合、相続人全員での協議が不要なため、手続きが迅速に進みます。一方、遺産分割協議が必要な場合は、相続人全員の合意を得るために時間がかかることがあります。

必要書類:遺言書がある場合、被相続人の死亡を証明するための除籍謄本のみで足りるのに対し、遺言書がない場合は相続人全員を確定するために被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。

手続きのリスク:遺産分割協議の場合、相続人間の意見の相違が生じた場合、調停に発展する可能性があり、手続きが長期化することがあります。遺言書があれば、こうしたリスクを避けることができます。

 相続登記を円滑に進めるためには、遺言書の有無に応じた準備を適切に行い、それぞれの手続きのポイントを押さえることが重要です。

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