(論点)遺産分割協議がもめたときの手続きについて

2025年01月06日

遺産分割協議において相続人間で意見が合わず、協議が進まない、いわゆる「もめた」場合、相続の手続きをどう進めるべきかという問題が発生します。このような場合、法律で定められた手続きや、第三者の関与を通じて解決する方法が存在します。以下では、遺産分割協議が難航した際の手続きについて、順を追って解説します。

目次

1. 遺産分割協議とは

2. 家庭裁判所での調停手続き

3. 調停が不成立の場合の審判手続き

4. 裁判による解決の可能性

5. 弁護士の活用

6. もめないための事前対策

終わりに


1. 遺産分割協議とは

 遺産分割協議とは、相続が発生した後に、相続人全員が集まって遺産をどのように分けるかを話し合う手続きです。相続人全員の同意が必要であり、全員が合意した内容を書面にまとめ、署名・押印することで成立します。協議の際には、遺言書がある場合はその内容に従い、ない場合は法定相続分に基づいて話し合うことになります。しかし、相続人の感情的な対立や利害の衝突が原因で合意に至らないケースも少なくありません。

2. 家庭裁判所での調停手続き

 遺産分割協議でもめた場合、次の手段として家庭裁判所に調停を申し立てることが考えられます。調停とは、裁判所の調停委員会が関与し、相続人同士の話し合いを仲介する手続きです。

 調停委員会は、中立的な立場の調停委員と裁判官で構成され、双方の主張を聞きながら、円滑に解決できるように調整を行います。調停は、裁判のように判決が下されるわけではなく、あくまで当事者同士の合意に基づく解決を目指します。そのため、相続人が全員納得できる形での解決が期待できる点がメリットです。

 調停の手続きは、まず相続人の一人が家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てます。申し立ては相続人の一人からでも可能で、他の相続人全員が調停の対象となります。申し立てに必要な書類は、被相続人の戸籍謄本、遺産目録、相続人全員の戸籍謄本などです。

 調停の費用は比較的低額で済むことも多く、また、解決にかかる時間も裁判に比べて短期間で済むことが一般的です。調停が成立した場合、その内容は調停調書に記載され、これは法的効力を持つため、協議書と同じく強制力があります。

3. 調停が不成立の場合の審判手続き

 調停でも合意に至らなかった場合、次のステップとして家庭裁判所は審判手続きに移行します。審判手続きでは、裁判所が相続人の主張や証拠をもとに、法的に適正な遺産分割の内容を決定します。

 審判は、調停とは異なり、裁判所が最終的な判断を下す手続きです。審判では、被相続人の意思や遺言書の有無、相続人の生活状況や相続財産の種類・内容など、さまざまな要素を総合的に考慮して裁判官が遺産分割を決定します。

 審判の結果は、審判書という形で通知され、これには法的拘束力があるため、相続人全員が従わなければなりません。審判に不服がある場合は、判決に対して不服申し立て(抗告)を行うことも可能ですが、基本的には審判の決定内容に基づいて相続が確定します。

4. 裁判による解決の可能性

 審判で解決しない場合や、さらに争いが続く場合は、訴訟手続きに移行することもあります。これはいわゆる「遺産分割の裁判」として行われ、相続人同士が裁判で争う形となります。訴訟では、裁判所が証拠や主張をもとに法的に適正な判断を下し、遺産分割の方法を確定させます。

 裁判手続きは、通常の民事訴訟と同様に、双方の主張や証拠をもとに進められるため、時間がかかることが一般的です。また、訴訟費用や弁護士費用などの負担も増大するため、可能な限り調停や審判での解決を目指すことが望ましいです。裁判での判決には法的拘束力があるため、最終的にはその判決に従って遺産分割が行われます。

5. 弁護士の活用

 遺産分割がこじれた場合、早期に弁護士に相談することも有効です。遺産分割協議や調停、審判、裁判のいずれの段階においても、法律の専門家である弁護士のアドバイスや代理人としてのサポートが役立ちます。特に、相続人同士の感情的な対立が激しい場合や、相続財産が複雑な場合には、弁護士が関与することで冷静な話し合いが促され、解決が早まることがあります。

 弁護士は、相続に関する法律や手続きについての専門知識を持っているため、遺産分割の際に法的に有効な解決策を提示してくれます。また、相続人間の交渉や家庭裁判所での手続きの際に代理人として動いてくれるため、当事者自身が直接争う必要がなくなり、精神的な負担を軽減することができます。

※司法書士にはこのような権限が法定されておりません。必ず弁護士にお問い合わせください。

6. もめないための事前対策

 遺産分割がもめる原因の多くは、事前に適切な準備がされていないことにあります。これを防ぐためには、被相続人が生前に遺言書を作成し、遺産分割の方針を明確にしておくことが重要です。公正証書遺言であれば法的効力が確実であり、相続人同士の争いを未然に防ぐことができます。

終わりに

 遺産分割協議がもめた場合、家庭裁判所の調停手続きや審判、さらには訴訟などの法的手続きを経て解決を図ることができます。しかし、法的手続きに移行する前に、できる限り冷静に話し合い、専門家の助けを借りることで、円満な解決を目指すことが大切です。相続人全員が納得できる形での解決を目指すためにも、早めの準備と適切なアドバイスが重要です。

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