(論点)日本に住所をもたない外国人による株式会社設立

2025年01月23日

日本に住所を持たない外国人が株式会社を設立し、その後「経営・管理」の在留資格を取得するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。また、平成27年までは、日本国内に居住しない代表取締役についての制限があり、外国人を代表取締役とする株式会社は作れませんでしたが、今では代表取締役全員が外国に居住していても設立可能です。それでは、在留資格の要件などについて解説します。

目次

1.在留資格(経営管理)の要件 

2.在留資格取得のための注意点

3.不法に中国人男性の"在留期間の更新"をほう助した疑いで中国国籍の男(38)を逮捕 虚偽申請となった男性の在留資格は取り消し(Yahooニュース引用)


1.在留資格(経営管理)の要件 

(1)事業の規模要件

 外国人が経営する事業の規模が一定の基準を満たす必要があります。

 資本金または投資額が500万円以上であることが求められます。この資金は新たに設立する株式会社の運営資金として使用されます。

 もしくは、常勤の従業員が2名以上いることも基準に該当します。これには日本国籍の従業員、または永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者が含まれます。

(2)事業計画の明確さ

 日本国内での事業を適切に運営するための具体的な事業計画を提出する必要があります。事業の持続可能性、収益性、事業の内容について明確な計画を立てることが求められます。

 事業の設立目的や展望に関して、日本の社会経済に貢献するかどうかも重視されます。

(3)事業の運営拠点

 設立した株式会社が使用するオフィスや事務所の実態が必要です。これは自宅をオフィスとして利用することは通常認められず、商業用不動産を借りて正式なオフィスを構える必要があります。

(4)外国人経営者の在留資格

 外国人経営者自身が「経営・管理」ビザを取得するためには、日本に滞在して事業を運営する意志と能力が必要です。また、過去のビジネス経験や経営管理に関する知識、リーダーシップ能力などが重視されます。

(5)事業の適法性

 設立しようとする事業が日本の法律に則っていることが必要です。特に、規制が厳しい業種(金融、不動産、飲食店など)の場合は、特別な許認可が必要となることがあります。

(6)生活基盤の証明

 経営者自身が安定した生活基盤を有していることが求められます。具体的には、日本での生活を支えるための十分な資金を有していることを示すことが必要です。

 これらの要件を満たすことが確認された後、正式に「経営・管理」の在留資格が取得できる可能性があります。また、ビザ申請の際には、十分な証拠書類(事業計画書、資金証明書、契約書など)を整え、入国管理局に提出することが必要です。

2.在留資格取得のための注意点

(1)資本金・投資額の500万円についての注意点

実質的な資金の用意が求められる:資本金または投資額の500万円は、単に数字上で示すだけではなく、実際に運営に使えるものである必要があります。例えば、銀行口座に500万円を一時的に入金し、ビザ申請後すぐに引き出して使わないような行為は認められません。

自己資金の証明:資本金500万円を準備する際、その資金がどのようにして用意されたか、自己資金であるかの証明を求められる場合があります。特に、国外の銀行からの送金や第三者からの借り入れが含まれる場合には、資金の出どころについて詳細に説明し、正当性を証明する書類(預金証明書、送金明細など)が必要です。

(2)事業計画の現実性と収益性の注意点

事業の継続性を重視:提出する事業計画書は、ビジネスが継続的に運営でき、かつ収益を見込めるものでなければなりません。事業計画が現実的でなかったり、収益モデルがあいまいであったりすると、在留資格の審査が厳しくなる可能性があります。

収支予測の信頼性:売上予測やコスト計算は具体的かつ信頼性のあるものでなければならず、実際のマーケットリサーチに基づいたものであることが理想です。大まかな計算ではなく、具体的な数字を示すことで審査官に説得力を持たせることが重要です。

(3)オフィスや事務所の物理的な存在に関する注意点

仮の住所やレンタルオフィスの制限:オフィスの実態が必要とされるため、単に住所だけを借りる形式のバーチャルオフィスでは不十分な場合があります。実際にビジネスが行われていると認められる物理的なオフィススペースが求められます。

オフィス契約書の提出:申請の際にはオフィスの賃貸契約書や不動産契約書など、オフィスの所在地とその使用権を証明する書類を提出する必要があります。オフィスの賃料なども事業計画に含め、経費の一部として計上します。

(4)経営者自身の能力や背景の確認

ビジネス経験や専門知識の証明:日本での事業を運営するためには、経営者自身の経営に関するスキルや経験が問われます。過去に経営した事業の実績や、経営に関する学歴・資格があると、審査の際にプラスに働きます。

日本語能力の確認:必ずしも高い日本語能力が求められるわけではありませんが、事業運営において必要な最低限のコミュニケーションが取れるかどうかが問題になることがあります。ビジネス活動に支障がないレベルの言語能力が求められる場合があります。

(5)許認可業種の注意点

特定の業種における許認可の取得:日本では、特定の業種(飲食業、建設業、不動産業など)において、営業許可や資格が必要な場合があります。これらの許認可は「経営・管理」のビザ申請前に取得しなければならないことが多いため、許認可のプロセスを事前に調べ、十分な時間を確保することが重要です。

(6)税務・労働法上の遵守事項

労働基準法や社会保険の遵守:事業を運営する際、日本の労働基準法や社会保険法を遵守し、従業員を雇う場合には適切な雇用契約の締結や社会保険への加入が必要です。これらの遵守事項が守られていないと、事業運営の信頼性が低下し、在留資格の更新が難しくなることがあります。

(7)生活基盤の証明に関する注意点

生活費や住居の確保:日本国内での生活を支えるための十分な資金や住居があるかどうかがチェックされます。事業運営資金とは別に、個人の生活費をまかなえるかどうかも重要視されます。また、日本における住居を確保し、その契約書類を提出する必要があります。

(8)申請書類の不備・不正確さに関する注意点

書類の正確性と完全性:申請時に提出する書類に不備や不正確な情報があると、審査が大幅に遅れたり、最悪の場合、申請が却下される可能性があります。申請書類には細心の注意を払い、特に資金に関する証拠や事業計画に関しては詳細かつ正確な情報を提供することが求められます。

(9)在留資格の更新に関する注意点

事業の進捗と更新時の審査:在留資格「経営・管理」は最初は1年もしくは3年で交付されますが、その後の更新に際しては、事業が適切に運営され、収益が出ているか、継続可能な状態にあるかが審査されます。更新時には、過去の事業運営状況を示す決算書や税務申告書、従業員の雇用状況などが重要な審査対象となります。

3.不法に中国人男性の"在留期間の更新"をほう助した疑いで中国国籍の男(38)を逮捕 虚偽申請となった男性の在留資格は取り消し(Yahooニュース引用)

 「虚偽の内容で知人の中国人男性の在留期間更新の幇助をした疑いで、埼玉県に住む中国国籍の男が逮捕されました。

出入国管理及び難民認定法違反(虚偽申請)幇助の疑いで逮捕されたのは、埼玉県草加市に住む中国国籍の会社員の男(38)です。

男は氏名不詳者らと共謀して「経営・管理」の在留資格を持って日本に滞在していた中国人の男性に、会社を経営している事実がないのに行政書士を介して会社を経営しているなどと虚偽の内容で在留期間更新許可申請を行い、その際に中国人の男性名義の金融口座に資本金ではない500万円を入金。男性の会社の資本金が500万円であるという虚偽の内容の資料を作成し、在留期間更新の許可を受けることを幇助した疑いが持たれています。

中国人の男性は在留期間更新の許可を得ましたが、その後、在留資格を取り消されています。

男は去年。窃盗の疑いで逮捕されていて、その余罪捜査の過程で今回の事件が発覚。

警察は捜査に支障があるとして男の認否を明らかにしていません。警察は組織的な犯行の可能性もあるとみて経緯などを詳しく調べています。」(引用終わり)

 つまり、在留資格更新の調査ではなく別件で違法行為を行ったために発見された不法行為というわけです。厳しく取り締まってほしいものです。

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