(論点)会社・法人のみなし解散について

2024年09月01日

会社・法人の役員の任期がある場合、みなし解散の制度の適用を受ける場合があります。みなし解散とは、一定の要件を充たした場合に、法務局からの通知書が届き、通知から2ケ月以内に、法務局に対し「事業を廃止していない旨の届出」を行うことなく期間が経過してしまった場合に、登記官が職権で解散の登記をする手続きを言います。勿論、解散の効果は同じなので、その影響は様々な部分に出てきます。それでは解説していきます。

目次

1.みなし解散の通知書が届いたら

2.みなし解散登記がされてしまった後の対応

①会社の継続登記

➁会社解散・清算結了登記をする場合

3.まとめ


1.みなし解散の通知書が届いたら

 法務局から、毎年10月ぐらいに「みなし解散」の通知を受けた場合、みなし解散登記を回避するためには通知後2か月以内に、「事業を廃止していない旨の届出」を提出する必要があります。この届出を行うことで、解散とみなされることを防ぐことができますが、過去に懈怠していた役員の変更登記がある場合、その登記も遅滞なく行わなければなりません。役員の変更登記は法律上の義務であり、これを怠ると過料が科される可能性もあるため、速やかに手続きを行うことが重要です。

通知書が届いたら、まずは司法書士にご相談ください。

2.みなし解散登記がされてしまった後の対応

 みなし解散登記がなされた後は、解散の効力が発生します。長期間放置しておいた場合、様々な影響が出ます。例えば、建設業の許認可や社会保険関連についてです。社会保険事務所に長期放置していた会社の代表の方が相談すると、みなし解散から今までの保険適用の病院の費用の7割分を返納を迫られたそうです。長期間放置していなければ、「法定清算人の就任登記と会社継続登記」をすることで、会社・法人をみなし解散から通常の状態に戻すことは可能ですが、一度解散した事実は消すことはできません。

 とにかく、みなし解散登記が入った以上は、解散の状態になってしまいます。ここからの手続きの選択肢は2つ。会社を継続させる方法と、そのまま、解散登記を有効として清算人の就任登記を入れて清算結了まで行う方法です。それでは解説いたします。

①会社の継続登記

 みなし解散登記が行われた後、会社を継続するためには「会社継続の登記」を行う必要があります。しかし、その前に「法定清算人の登記」を行わなければなりません。法定清算人とは、解散後の会社の財産を清算する責任者であり、解散前の役員(取締役や理事)だった者全員が対象なので、この者たちを正式に登記することで、会社継続手続きに進める準備が整います。登記簿を取得しても現在事項証明書では、取締役会や取締役、会計参与、会計監査人など、監査役関連の役員以外は、職権で抹消されており、登記簿に反映されませんので、必ず「全部事項証明書」を取得してください。そこで抹消されている取締役の方が清算人となり、代表取締役の方が代表清算人となります。登録免許税は9000円です。

法定清算人の登記が完了した後に、会社継続の登記を行うことで、会社の法人格が復活し、事業を再開することが可能となります。登記は「会社継続並びに取締役及び代表取締役の就任」(みなし解散前に取締役のみの構成だった場合)となります。登録免許税は、役員変更3万(資本金1億円以下の場合1万円)、会社継続3万円となります。

※みなし解散による解散の場合には、会社継続の手続きができる期間が解散後3年以内です。

➁会社解散・清算結了登記をする場合

 みなし解散の登記を活かして、そのまま生産活動に入るという選択肢もあると思います。

 この場合、みなし解散の登記しかありませんので、清算人の登記が必要となります。この清算人の登記の場合、株主総会で選任した清算人をいきなり登記できるのかというと、それはできません。なぜなら、上記にも説明した通り、みなし解散の登記が入った場合、その時点で「法定清算人」が就任しているからです。仮に3人の取締役がいて、その中の代表者だった取締役のみの登記をしたい場合には、いったん「清算人の就任」の登記で、みなし解散登記の日付で、法定清算人(事例の場合、3人分すべて)の就任を登記します。その後、2名の清算人の退任登記を実施することになります。

 その後、現務の終了・債務の返済・債権の回収・残余財産の分配という生産活動に入ります。官報公告を行いますが、この広告後2か月経過で、生産活動が終わっていれば、株主総会にて、清算結了の決議を行い、「清算結了の登記」を実施します。登録免許税は、2000円です。

3.まとめ

 みなし解散について解説をしてきました。みなし解散の通知書が届いた段階で、専門家に相談してください。許認可を受けている会社・法人の代表者の方は、特にです。みなし解散の登記が入る前で、役員の任期についての登記を入れる際、2パターン考えられます。一つは、「選任懈怠(選んでなかった)」です。選任懈怠は、選んでないので、今選任しますというものです。しかし、許認可が必要な会社は、これを選択するべきではありません。役員選任懈怠から今回の会社の実態を証明できなくなるためです。下手をすれば、許認可を取り消される可能性もあります。この場合には、「登記懈怠(選任してたけど登記するのを忘れてた)」で行うべきです。選任はしていたので、登記懈怠による過料は免れませんが、役員がずっと存続していた証明はできます。

 そして、みなし解散登記が入ってしまった場合、解散手続きに入る場合も会社継続をする場合も共通で「法定清算人の就任登記」が必要となります。

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