(商業)取締役・代表取締役選任の際の印鑑証明書について

2024年10月04日

取締役・代表取締役の就任に際して提出が求められる印鑑証明書について、取締役設置会社と取締役会非設置会社に分けて解説いたします。

目次

1.取締役会設置会社

2.取締役会非設置会社

3.共通事項

4.代表取締役選任時の印鑑証明書

5.まとめ


1.取締役会設置会社

 取締役会を設置している会社は、重要な意思決定を取締役会で行うため、代表取締役は取締役会によって選定されます。そのため、就任時に印鑑証明書の提出が必要となる場面は以下の通りです。

取締役就任時: 取締役として選任される際には、基本的に印鑑証明書は求められません。本人確認情報(住民票や運転免許証のコピー、マイナンバーカードのコピーなど)にょり、本人確認をするため戸の本人確認証明書を添付することになります。。

代表取締役就任時: 代表取締役に就任する際は、印鑑証明書の提出が義務付けられています。これは、代表取締役が会社を代表して法的に重要な権限を持つため、確実な本人確認が必要だからです。具体的には、登記申請時に添付するための書類として提出が求められます。

2.取締役会非設置会社

 取締役会を設置していない会社の場合、代表取締役の選定手続きが異なり、取締役の中から直接代表者が選任されます。このような会社における印鑑証明書の取り扱いは以下の通りです。

取締役就任時: 取締役会非設置会社でも、取締役に就任する際に印鑑証明書の提出は通常必要ありません。ただし、会社の規模や規程により提出を求める場合も考えられます。

代表取締役就任時: 取締役会非設置会社においても、代表取締役の選任時には印鑑証明書が必要です。取締役会設置会社と同様に、代表者が会社を代表する責任者となるため、登記申請に際して本人確認を行うための印鑑証明書が求められます。

3.共通事項

 就任承諾書に押印した実印を証明する印鑑証明書については、有効期限の取り決めはありません。しかし、代表取締役のように法人の印鑑届を要する場合には、就任から3か月以内に発行されたものでなければなりません。

 印鑑証明書の提出は、法務局に提出する登記申請書類に添付する形で行います。原本を返却してほしい場合には、原本還付請求手続をとれば可能です。

4.代表取締役選任時の印鑑証明書

 代表取締役の選定に際して、印鑑証明書の提出に関するルールは、会社の機関設計や定款の定めにより異なります。代表取締役の選定方法は、取締役会による選定、株主総会による選定、または取締役の互選などがあり、いずれの方法であっても、選定に関わる議事録等に出席した取締役や監査役は、その議事録に実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要があります(商業登記規則第61条6項)。この実印は、市区町村に登録されている印鑑でなければなりません。

 ただし、特例として、変更前の代表取締役が新任の代表取締役の選定決議に出席し、その議事録に会社の実印(法務局に届出済みの印鑑)を押印している場合、出席した取締役や監査役の印鑑証明書の添付は省略可能です(商業登記規則第61条6項但し書き)。これにより、議事録の作成や印鑑証明書の取得にかかる手間が軽減される場合があります。この規定は、手続きの効率化を図るために設けられていますが、適用条件に注意が必要です。

5.まとめ

 このように、取締役の場合、取締役会非設置会社の場合、重任を除き就任承諾書には実印での押印及び、印鑑証明書の添付も必要です。代表取締役の場合、取締役会・株主総会・定款の定めによる互選などで選定されますが、これらの選定した書類(株主総会議事録等)への押印について、重任を除き原則として出席取締役全員の実印による押印と印鑑証明書の添付が要求されます。例外として、前任の代表取締役が会社の法人印で押印した場合、その他の取締役の押印は認印で構いません。

 アイリスでは、代表取締役の方が辞任される場合には、本人確認と辞任届に実印で押印していただき、印鑑証明書をいただくようにしております。なぜ、法定以上の内容を実施しているのかと言いますと、以前、飛び込みのお客様で、法人の役員を一新させる内容(解任による登記)の役員変更の相談を受けました。その際、法務局からの通知の話をすると顔が青ざめて、「検討させていただきます。」とだけ言い、その後来なかったケースがありました。このケースが会社の乗っ取りに該当するかどうかはわかりませんが、現実にあるのかもしれないという経験をしたためです。

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