「製作物供給契約」について

2023年05月17日

先日、契約書をチェックしてほしいとのご依頼があり、契約書の表題を見ると「製作物供給契約」となっていました。一般的には「請負契約」「委任契約」などが一般的ですが、「製作物供給契約」とは一体何でしょうか?解説していきます。

目次

1.製作物供給契約とは

2.製作物供給契約と請負契約の違い

3.契約時に定める事項

4.まとめ


1.製作物供給契約とは

 製品の政策及び譲渡(納品)を委託する契約となります。民法でいう請負契約に類似する性質を有しますが、商人間の契約となりますので、民法と商法の両面から検討した場合、それぞれ微妙に異なる部分があります。よって、契約の内容としては、できる限り具体的かつ明確な事項を記載した契約書にすべきです。

 製作物供給契約とは、受託者が自社の材料の全部または主要部分を供給(有償無償を問わない)・製作し、完成させた製品を委託者に納品する契約です。

 契約当事者双方の認識のずれからトラブルに発展するケースもありますので、契約書以外に「仕様書」を作成し、仕様書内容に応じた製品の製作・供給を委託する内容にするのが一般的です。

2.製作物供給契約と請負契約の違い

 民法に規定されている「請負契約」は、仕事の完成が目的となります。仕事の完成が目的だと、完成した商品を納品した際の所有権・危険負担は完成した段階で買主に移転してしまいます。これでは、検収する前に何かあった場合具合が悪いので、請負ではなく「製作物供給契約」としておくことで、仕事完成後の引き渡し、そして検収後に所有権と危険負担が移転するようにするのが一般的です。

3.契約時に定める事項

 ここでは、製作物供給契約で最低限定めておくべき事項について解説いたします。実際の契約書では代金の支払い時期なども記載する必要があります。

 ①業務内容

  製作を委託する製品の仕様(数、種類や品質など)を定めます。契約書のほかに仕様書を作成し、具体的な内容にしておくことが重要です。

 ➁所有権・危険負担の移転時期

  製作した製品の所有権と危険負担(当事者双方のいずれの責めにも帰すことのできない事由によって製品が滅失・毀損した場合の危険を、どちらの当事者が負担するかという問題)が、いつ委託者へ移転するのか規定します。一般的には納品時に危険負担が移転し、検収合格時に所有権が移転する取り決めが多いですが、取り扱う商品などにより変わってきます。

 ③検収

  完成した製品の納品方法や委託者が行う検収の方法を定めます。委託者が研修に義務を怠った場合のために、その期間を設け期間が経過すると合格したものとみなすと定めておきます。また、検収合格後の製品に契約不適合が見つかった場合、受託者は責任を負わない旨の定めがあれば、受託者にとっては有利に内容となります。

  商法526条第1項により、生成物供給契約が会社間で行われる(商人間取引)である場合には、製品の検収は義務になります。

 ④契約不適合責任

  納品された製品が契約で定められた種類又は品質に合致しないことを言います。委託者側からすると、契約不適合を発見した時点で、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除のどの種類の請求もできるようにしておくとよいでしょう。なぜなら、民法の規定では、追完請求しても受託者が応じない場合に初めて代金減額請求ができるという仕組みになっているからです。(民法562条、563条)

  また、商人間では、検収で契約不適合を発見した場合には、「直ちに」受託者に対してその旨を通知しなければ、契約不適合責任を追及できなくなります。(商法526条第2項)そして、6か月が経過したときも同様に責任追及はできなくなってしまいます。

  ※受託者が悪意(契約不適合があることを事前に知って納品した)であった場合には、上記規定は適用されず、受託者は必ず責任を負うことになります。

4.まとめ

 「製作物供給契約」について、調べた内容を解説いたしました。個人取引の場合には、民法の適用のみ考えればいいのですが、会社間(商人間)となると商法の適用も考慮しなければなりません。民法の場合も債権法の大改正により危険負担や契約不適合責任の内容が大きく変わっております。しかっかり取引内容を契約書に反映できるようにするために、専門家への相談は欠かせないと考えます。

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