(論点)戸籍の第三者取得

2024年03月23日

先日の新聞記事にて、「戸籍謄本 委任状は「不要」 第三者請求 窓口で提出要求相次ぐ」という見出しが目に留まりました。第三者請求については、戸籍法にて要件が定められています。その「正当な理由」を拡大解釈している恐れがあると思いましたので、実際の運用についてお話をしてみたいと思います。

目次

1.戸籍の第三者請求とは

2.戸籍法第10条の2第1項の正当な理由にあたるものの例

3.「戸籍謄本 委任状は「不要」 第三者請求 窓口で提出要求相次ぐ」(読売新聞記事)

4.まとめ


1.戸籍の第三者請求とは

 中央区HP引用

「戸籍の証明書については、戸籍に記載されている本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母)・卑属(子、孫)以外の第三者であっても、自己の権利行使や義務履行に必要な場合など、正当な理由があると認められた個人または法人は請求することが可能です。 第三者の戸籍の証明を請求する方法は、次のとおりです。なお、第三者請求は、広域交付はご利用できませんのでご注意ください。

次の正当な理由がある方が対象です。請求は法人でも可能です。

(戸籍法第10条の2第1項)

①自己の権利を行使し、または自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある方

➁国または地方公共団体の機関に提出する必要がある方

③その他戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある方」(引用終わり)

第三者取得で、本人が窓口に行けない何らかの事情があり、隣人に戸籍の取得をお願いした場合、上記3つの要件には当たりませんので、委任状は必要と考えられます。

 それでは、窓口に来た方が、「正当な理由」があると言っていた場合、委任状はいらないのでしょうか?

2.戸籍法第10条の2第1項の正当な理由にあたるものの例

 一宮市HP引用

「戸籍法第10条の2第1項の正当な理由にあたるものの例

①相続人となった方が、相続人同士にあたる兄弟姉妹の戸籍を請求する場合

➁裁判所に申立てをする際の添付資料として必要な場合

③債権者(金融機関、不動産賃貸事業者等)による死亡債務者の相続人特定のため

④生命保険会社による保険金受取人である法定相続人の特定のため

上記の理由を証明できる資料をご持参ください。」(引用終わり)

例だけ見ると、かなり限定的に委任状は不要ということが分かります。

3.「戸籍謄本 委任状は「不要」 第三者請求 窓口で提出要求相次ぐ」(読売新聞記事)

(令和6年3月15日読売新聞記事引用)

「 総務省中部管区行政評価局は14日、第三者でも市町村の窓口で交付を請求できる戸籍謄本について、窓口で不要な委任状の提出を求められる事例が相次いでいると発表した。同局は、自治体への周知を徹底していくとしている。

 委任状は、申請する本人が窓口に行けない場合、代理人に依頼するときのみに必要としているが、正当な理由などがある第三者の請求では不要

 同局によると、愛知、岐阜、三重県を含む管内5県の159市町村のうち、8割の市町村のホームページ(HP)で、第三者が行う請求に「委任状が必要」と誤解を招く記載がされていた。同局ではHPの記載についても修正を求めていく。

 4月に相続登記の申請義務化が始まることから、同局は登記に必要な戸籍謄本の請求が増加することを見込み、注意を呼びかけている。」(引用終わり)

また、総務省の記事を掲載しておきます。 


4.まとめ

 新聞記事の見出しだけ見ますと、正当な理由がある第三者が委任状なしで他人の戸籍の取得ができるのに委任状を請求した、けしからん、と書かれていますが、正当な理由を拡大解釈しすぎている方もいるかと思います。 第三者請求にも当然要件があります。法律上では「正当な理由」としか記載がありませんが、各自治体のHPには、対象となる方の要件が記載されているところもあります。要件を充たしている場合は、委任状は当然不要になりますが、正当な理由をきっちり証明する必要があります。

 つまり、自分に正当な理由があることを立証できない限り、当然ですが「委任状」は必要です。委任状の要否については、実際に取得する窓口に事前に問い合わせることをお勧めいたします。いきなり窓口に委任状を持たず現れ、「私には正当な理由がある」と言っても、それを証明できないと無駄足になりますからね。

 無制限に第三者請求を手放しで認めるわけにはいかない事例として、以前取り上げた事件のリンクを張っておきます。

 過去のブログ記事(令和5年7月15日「他人の住民票を勝手に変更し口座開設?」)

最新のブログ記事

令和7年5月14日(水)に「北野純一税理士事務所」内で開催されます「相続法律・税務無料相談会」が実施されます。相続前のご相談、相続発生後のご相談、どちらにも対応しております。

相続が発生した際、遺産をどのように分割するかを決定するために、相続人全員で遺産分割協議を行います。遺産分割協議書は、その合意内容を正式に書面で残すものであり、特に不動産の相続登記を行う際に必須の書類となります。しかし、この協議書の内容が不備であったり、相続人全員の同意が得られていない場合、後々のトラブルを招くことがあります。本稿では、遺産分割協議書を作成する際に注意すべき点について詳しく解説し、トラブルを未然に防ぐための対策を考察します。

相続が発生した際、不動産の所有権移転を行うためには、相続登記を行う必要があります。一般的な相続登記では、父親が死亡し、配偶者と子供が相続人となるケースがよく見られます。この際に必要となる添付書類は、法定相続分による登記と、二次相続対策として子供に所有権を移転する場合で異なります。特に二次相続に備えるための所有権移転には慎重な準備が必要です。本稿では、それぞれのケースでの必要な書類を整理し、どのように進めるべきかを解説します。

開業して3年目を迎える司法書士として、初年度は積極的に営業活動を行いましたが、主に「不当誘致」の問題に悩まされ、成果を上げることができませんでした。その後、紹介を基盤とする営業へ転換し、異業種の士業と連携することで案件が増加しました。一方、インターネット集客にも力を入れており、現在の課題はコンバージョン率の改善です。これからも計画的に改善を進め、さらなる成長を目指します。

<