(論点)共有不動産の持共有関係の解消(贈与と持分放棄の法的・税務的観点)

2024年09月17日

共有不動産の持分を解消する際、持分を贈与するのか、持分放棄をするのかという選択肢があります。この2つの方法には、それぞれ異なる法律上および税務上の影響があります。ここでは、それらの違いと注意すべき点を解説します。

目次

1. 持分贈与の法的側面

2. 持分贈与の税務面

3. 持分放棄の法的側面

4. 持分放棄の税務面

5. どちらの選択肢が有利か

6. 結論


1. 持分贈与の法的側面

 持分贈与とは、共有不動産の持分を他の共有者に無償で譲渡することです。贈与は、贈与者の意思表示と受贈者(もらう側)の意思表示が必要です。贈与自体は意思表示時点で成立はしますが、証拠として贈与契約書を作成し、登記手続きを行うことで、持分の移転が正式に完了します。この場合、受贈者は贈与を受けた持分を完全に自分のものとする権利を持ちます。法的には、贈与が完了した時点で、贈与者の持分は受贈者に移転し、贈与者はその不動産に関して一切の権利を失います。

2. 持分贈与の税務面

 贈与を行った場合、受贈者には贈与税が課されます。贈与税の額は、贈与された持分の評価額に基づき算出され、税率は累進課税方式で適用されます。また、不動産の場合、固定資産税評価額を基準に評価額が決まりますが、実際の市場価値との差異があるため、税務署と相談しながら進めることが重要です。さらに、贈与税の基礎控除額(年間110万円)を超える場合、課税される点にも注意が必要です。

 また、贈与後に不動産を売却するときの「譲渡所得税」の「取得費」について、受贈者は、贈与物件に係る贈与者の取得日・取得費を引き継ぐことになります。

3. 持分放棄の法的側面

 一方、持分放棄は、共有者が自らの持分を無償で放棄する単独行為です。持分を放棄することで、その持分は他の共有者全員のものとなり、持分比率に応じて再配分されます。法的には、持分放棄を行うことで、放棄した共有者はその不動産に関する権利を失い、他の共有者は持分が増える形となります。持分放棄は贈与とは異なり、特定の共有者に対して持分を移転するのではなく、共有者全体に対して持分が分配されることが特徴です。ただし、共有者が2名であり、そのうちの1名が持分放棄をした場合、上記の持分を贈与したのと同じ効果が得られます。複数名居た場合は、残された共有者の持ち分比率に応じて持分が移転します。

4. 持分放棄の税務面

 持分放棄の場合、放棄された持分が他の共有者に移転する際、移転を受ける側に贈与税が課される可能性があります。特に、持分放棄が特定の共有者に利益をもたらす場合、その共有者に対して贈与とみなされるケースがあり、贈与税が発生することがあります。さらに、持分放棄による共有者間の持分調整が、市場価値に対して無償で行われたと判断される場合、税務署が贈与と認定するリスクがあるため注意が必要です。まずは課税される可能性が高いので、確定申告時に申告しておくことをお勧めします。よくわからない場合には、税理士にご相談ください。

 それと、持分放棄後に当該不動産を売却する場合の譲渡所得税についての「取得費」について、贈与課税時は、概算取得費(売却金額の5%等)が取得費となり取得費の引き継ぎがないので、当局側の課税の実務では、贈与課税時の時価を取得費とすることから、二重課税はないということになります。

5. どちらの選択肢が有利か

 持分贈与と持分放棄のどちらが有利かは、具体的な状況によります。贈与の場合、受贈者に贈与税が課されますが、特定の相手に持分を渡すことができるため、相続や家族間の財産分与を考慮した場合に有効です。一方、持分放棄は共有者全体に平等に持分が分配されるため、特定の相手に財産を集中させたくない場合や、税務リスクを最小限に抑えたい場合に適しています。

 ただし、持分放棄は共有者が2名でないと、共有関係の解消には至らないということや、税務上のメリットデメリットが存在します。詳しくは専門家にご相談ください。

6. 結論

 共有不動産の持分を解消する際には、持分贈与と持分放棄のそれぞれに法的および税務的な影響があります。どちらを選択するかは、個々の事情や目的に応じて慎重に検討する必要があります。贈与税の負担や持分の再配分の影響を考慮し、最適な方法を選ぶためには、専門家のアドバイスを求めることが重要です。

 ただし、不動産登記手続きについては、登記原因証明情報の内容と当為原因が異なる程度で、それ以外で異なる部分はありません。

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