離婚協議書の書き方について
目次
0.離婚協議書(案)
1.離婚協議書の書き方
2.離婚協議書を公正証書にする意味と有効性
3.年金分割の注意点
現在(令和5年3月時点)で、当事務所でのサポートは行っておりませんが、問い合わせが多いですので調べた結果を記載いたします。ご参考になればと思います。
0.離婚協議書(案)
このひな形は、参考例です。すべての項目を網羅する必要はありませんが、必要に応じてご活用ください。
引用元:離婚協議書・離婚公正証書作成相談室|離婚協議書の雛形と文例の見本
1.離婚協議書の書き方(各項目についての解説)
離婚する相手と話し合って、離婚内容を決めていくことになります。話し合う内容は主に以下のようなもの
⓪離婚に合意した旨
(離婚の合意) 第1条 夫●●●●(以下、「甲」)と妻●●●●(以下、「乙」)は、協議離婚することに合意し、下記の通り離婚協議書を取り交わした。
※その際、「離婚届の提出日」「誰が離婚届けを役所に提出するか」などを記載する場合もあります。
①親権者の指定について
(親権者及び監護権者) 第3条 甲乙間に生まれた未成年の子である長男▲▲▲▲(平成○○年○月○日生、以下「丙」)、次男▲▲▲▲(平成○○年○月○日生,以下「丁」)、及び長女▲▲▲▲(平成○○年○月○日生,以下「戊」)の親権者を乙と定める。
2 乙は丙、丁、及び戊の監護権者となり、それぞれが成年に達するまで、これを引き取り養育する。
※親権者の指定は、離婚の届出時に限り、父母の合意だけで可能になります。 離婚の成立後に親権者を変更したいときは、家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。 家庭裁判所の関与なく、父母の協議だけで親権者を変更することは認められません。
➁養育費の支払い
(養育費) 第4条 甲は乙に対し丙の養育費として平成○年○月から平成○年○月まで、毎月末日限り、金○○万円を、丁の養育費として平成○○年○月から丁が成年に達する日の属する月まで、毎月末日限り金○万円を、戊の養育費として平成○○年○月から戊が成年に達する日の属する月まで、毎月末日限り金○万円の合計金○○万円を乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。
2 振込み手数料は甲の負担とする。
3 甲乙は、上記に定めるほか、丙、丁、及び戊に関し、入学や入院等、特別な費用を要する場合は、互いに誠実に協議して分担額を定める。
4 上記養育費は、物価の変動その他の事情の変更に応じて甲乙協議のうえ増減できる。
※養育費は子供を育てる為に必要な費用のことで、「衣食住に必要な経費や教育費」「医療費」「最低限度の文化費」「娯楽費」「交通費」など、子どもが自立するまでにかかるすべての費用が含まれます。
➁ー1.そもそも養育費を支払うのか
➁ー2.支払うならその金額はいくらか
➁ー3.支払い期限はいつからいつまでか
➁ー4.養育費の支払い方法(短期間集中型か長期月額支払うか)
③慰謝料について
(慰謝料) 第5条 甲は、乙に対し、慰謝料として金○○○万円の支払義務があることを認め、これを○○回に分割して、平成○○年○月から平成○○年○月まで、毎月末日限り金○万円を乙の指定する金融機関の預貯金口座に振り込んで支払う。
2 振込み手数料は甲の負担とする。
3 甲について、下記の事由が生じた場合は、乙の通知催告を要さず、甲は、当然に期限の利益を失い、乙に対して残金を直ちに支払う。
(1) 分割金の支払いを1回でも怠ったとき。
(2) 他の債務につき、強制執行、競売、執行保全処分を受け、或いは公租公課の滞納処分を受けたとき。
(3) 破産、民事再生手続開始の申立てがあったとき。 (4) 手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
(5) 乙の責めに帰することができない事由によって、所在が不明となったとき。
※相手から受けた精神的苦痛に対して支払うお金を慰謝料と言います。
③ー1.慰謝料はそもそも支払うのか
③ー2.支払い金額はいくらにするか
③ー3.支払うなら期日はいつまでか
③ー4.支払い方法は一回払いか、複数回払いか
③ー5.振込手数料はどちらがもつか
※慰謝料:離婚してから3年間で時効にかかります。時効とは、請求可能な期限でその間に請求しなければ、その請求権を失ってしまいます。
④財産分与について
(財産分与) 第7条 甲は乙に対し、財産分与として金○○万円を平成○○年○月○日までに乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。
2 振込み手数料は甲の負担とする。
※財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で築き上げた財産をそれぞれの貢献度に応じて分配することをいいます。
④ー1.財産分与の対象となる財産はなにか
④ー2.財産分与として譲り渡すものは何か
④ー3.財産分与の支払いはいつまでにするか
④ー4.一括で支払うか、複数回で支払うか
※財産分与:離婚してから2年間で時効にかかります。時効とは、請求可能な期限でその間に請求しなければ、その請求権を失ってしまいます。
➄子供との面接交渉について
(面接交渉権) 第15条 甲の丙、丁、及び戊に対する面接交渉については、以下の内容とする。
1 面接は月に○回、○時間以内とし場所は甲乙協議の上決定する。
2 乙は、甲が丙、丁、及び戊と○ヶ月に1回、宿泊を伴う面接交渉をすることを認める。
3 面接時は事前に甲は乙に連絡するものとする。
※面接交渉とは、離婚したことで子供と離れて暮らす親が、定期的に子供と会い、交流することを言います。
どの程度の頻度で面会交流するか
(例)月1回の頻度、年2回の1泊程度の宿泊など
面会交流の日時
1回あたりの面会交流の時間
面会交流の方法や取り決め
普段の連絡の可否
⑥年金分割について
(年金分割) 第14条 甲(第1号改定者)及び乙(第2号改定者)は厚生労働大臣に対し、厚生年金分割の対象期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合を0.5とする旨合意し、乙は、離婚届提出後2箇月以内に厚生労働大臣に対し、合意内容を記載した公正証書の謄本を提出して当該請求を行うこととする。 甲(昭和○○年○月○日生)(基礎年金番号 ○○-○○○○○) 乙(昭和○○年○月○日生)(基礎年金番号 ○○-○○○○○)
※婚姻期間中に支払った保険料は、夫婦が共同で納めたものとして計算しようという制度です。
例えば専業主婦の場合、夫が支払った保険料の一部(最大で50%)を妻が払ったものとして、将来の年金額が計算されます。
⑦公正証書にするか否か
(公正証書) 第19条 甲及び乙は、本合意につき、強制執行認諾約款付公正証書を作成することを承諾した。
※この項目については、以下の「2.離婚協議書を公正証書にする意味と有効性」をご確認ください。
⑧清算条項について
これ以外に、特別な事情があってそれに関しての取り決めがあれば、加えて行くと良いかと思います。
2.離婚協議書を公正証書にする意味と有効性
公正証書は、公証人が当事者から合意内容を聴き取りこれを書面化した公文書のことを言います。高い証明力を持ち、相手が金銭の支払いを怠った場合は裁判所の判決を待たず、直ちに強制執行手続き(裁判所による強制的に金銭回収手続き)に移ることができます。
例えば、「離婚時に慰謝料を払います。」といったものの、一向に支払われる気配がない場合、確実に支払うという旨の証拠がないと言い逃れの可能性が高くなりますし、離婚協議書だけでは後から偽造することも不可能ではありません。
証拠とは「事実に基づく確実なもの」である必要があるので、離婚協議書だけではなく、公正証書にすることで、証拠としての価値が確実なものになります。
強制執行とは、裁判所を通じて強制的に給料や預金などを差押える行為です。慰謝料や養育費の請求を口頭や手紙で伝えても全く効果がない場合に有効で、支払い拒否などがあると裁判費用と手間(時間)をかけずに金銭を回収することが可能になります。
デメリットは、作成まで要する時間が、公証役場とのやり取りで作成しますので、時間がかかる点。約2週間から3週間程度かかる場合もあります。
公証役場の公証人との面談は、一方当事者のみで可能ですが、最終的に公正証書を作成するときには、夫婦での公証役場への出頭が必要となりますので手間もかかります。
3.年金分割の注意点
①年金分割を受け取れるのは、離婚時ではなく、自分自身が年金を受け取れるようになってからとなります。(自分自身が年金を受給できる年齢(原則65歳)であり、国民年金の加入期間は最低25年が必要です。)
➁夫の厚生年金に加入期間を、妻が自分の年金加入期間に足すことはできません。
③年金分割されるのは厚生年金であって、国民年金は年金分割の対象外です。
よって、自営業しか営んだ事がない夫の妻は年金の分割は受けられません。
④年金分割できるのは婚姻期間中の厚生年金のみで、婚姻期間中以外に夫が支払った保険料は、年金分割の対象外