遺言書の未来

2023年12月22日

令和7年ごろ、公正証書遺言がビデオ通話で作成可能になるということが発表されました。現状、公正証書遺言を作成するためには、公証人とじかに合う必要があります。私が受任した公正証書遺言書の作成も、施設や病院に入院されている場合で面会謝絶状態だった時には大変苦労いたしました。このような状況でもビデオ通話で公証人と会うことが許されれば、飛躍的に活用しやすくなりますね。それでは解説していきます。また、遺言もパソコンやスマホで作成できるようになるかもしれません。この辺りを詳しく説明いたします。 

目次

1.公正証書遺言について

2.現状の公正証書遺言書作成の流れ

3.公証人法改正によるビデオ通話による公正証書遺言書作成

4.「公証人が相当と認めるとき」とは

5.デジタル遺言制度創設検討開始

6.デジタル遺言制度のメリット

7.デジタル遺言の偽造防止策として

8.まとめ


1.公正証書遺言について

 公正証書遺言とは、公証人が関与して作成する遺言書のことです。費用は掛かってしまいますが、自分で書く遺言書(自筆証書遺言書)より、以下の点でお勧めです。

 ①公証人が関与するので形式面での無効になる可能性がまずありません。

 ➁内容が不明瞭で相続手続きに支障が出る可能性も低いです。

 ③公証役場委に返本が保管されているので、紛失リスクがありません。

 ④相続開始後に家庭裁判所の検認手続きが不要。

2.現状の公正証書遺言書作成の流れ

 ①公証役場で相談する。(士業等にサポートを依頼する場合は士業等に相談して下さい。士業が代理人として公証役場との打ち合わせ等をいたします。)

 ➁必要書類意を取得する。

 ③予約の上、公証役場に実印をもって臨む。(実印での証明には、印鑑証明書が必要となります。)

  ※証人2人が必要。(士業サポートの場合、士業の方で証人をそろえていただくことも可能です。また、公証役場にお願いをすれば、証人の手配をしていただけます。)

 ※ここからは、公証役場で当日実施する内容です。

 ④遺言者が公証人に遺言の趣旨を口述(証人以外は同席することはできません。)

 ➄公証人が遺言者の現行を読み聞かせを実施。

 ⑥遺言者と証人が署名押印(遺言者は実印で押印)

 ⑦公証人が署名押印

 ⑧公証人手数料を支払って、公正証書遺言の正本・謄本をもらう。

3.公証人法改正によるビデオ通話による公正証書遺言書作成

 令和5年6月6日、改正法が成立し、令和5年6月14日公布されております。そして、公布から2年6か月以内の政令で定める日が施行日となりますので、おそらく令和7年ごろからの開始となりそうです。

 改正後は、公証人の面前での手続きについて、遺言者が希望し、公証人が相当と認めるときは、ビデオ通話を利用できるということになっています。この場合の本人確認は、マイナンバーカードの電子証明書が利用されることになっております。

4.「公証人が相当と認めるとき」とは

 公証人が相当と認めるときとは、いったいどんな時なのかという疑問がわいてきますね。こちらについては、「法務省 公証実務のデジタル化に関する実務者との協議会」の資料によると、「必要性と許容性とを総合的に勘案して判断」するそうです。これまた、よくわからない表現になっています。

 必要性とは?(必要性で問題とならない場合)

 ①心身の状況や就業状態等により公証役場に出向くのが難しい場合

 ➁公証役場委に行くのが困難な地域

 ③感染予防のため施設や病院に外部の人が入れない状態

などが挙げられます。

 許容性とは?(許容性で問題となる場合)

 ①本人確認、意思確認をビデオ通話でも問題なくできない。

 ➁遺言能力について問題となりやすい高齢者。

 ③遺言能力に影響を及ぼす可能性のある病気・症状の診断を受けている。

 ④合理的な理由なく一部の相続人に全財産を相続させる遺言内容。

 ➄公証人への事前相談が遺言内容に利害関係を有する一部の親族を通じてされている。

このような場合には、公証役場も後々にもめることを考慮して慎重に許容性を判断することになります。

5.デジタル遺言制度創設検討開始

 これまで紙でしか認められなかった遺言が、ついにパソコンやスマホからでも作成が可能になるというニュースがでましたね。(令和5年5月5日 日本経済新聞)

 今までだと、自筆証書遺言ですと財産目録以外は、原則紙に直筆で書き込み、自署・押印が成立の要件となっていました。公正証書遺言も、公証人及び証人2名と自身で、書面上で書かれた内容について確認する作業が必要で、保管も書面での保管となっています。

 デジタル化されることにより、いったいどのようなメリットがあるのでしょうか。

6.デジタル遺言制度のメリット

 ①フォーマットに沿って入力するので、形式的な理由で無効になることがない。

  すでに、いろいろなサービスでフォームへの入力方式をとられていますが、今回のデジタル遺言制度も同様にフォーマットが用意されており、そこに入力する形で作成するみたいですので、自筆証書遺言のように自分なりの文章で書いたためにその内容が効力を生じないとはなり辛いと思います。全くないとは、現段階ではどのような仕組みを使ってするのかがわかりませんので、あえて全くないとは言い切れません。

 ➁紛失がなく、ブロックチェーン技術を使えば、改ざん防止も可能。

  デジタル空間で一番気になるのが、なりすましや改ざんといった不正行為のチェック機能だと思います。そこは、どうもブロックチェーン技術を使うみたいですね。

  ブロックチェーン技術とは、デジタル通貨ですでに実績のあるの技術ですね。改ざんがないことや所有者本人であることの証明をするための技術になります。

7.偽造防止策として

 いくらブロックチェーン技術を使っていても、作成の段階で成りすましていたらその信頼性が揺らいでしまいます。そこで、どうも偽造防止策として、「ネット上で顔撮影」+「電子署名」などで対応するみたいです。海外などでは、証人2名という事例もあるそうですので、今後の議論に注目ですね。

8.まとめ

 遺言書があれば、多くの相続手続きにて、相続人の負担を軽減できることは前にも書きましたが、そう遠くない未来に、遺言書作成のハードルは下がる施策が多く出てきます。現状では、今までと同じ手順を踏まなければなりませんが、遺言書の優位性は変わりません。

 残されたご家族の負担軽減のためにも、遺言書作成を検討してみることをお勧めいたします。

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