事業承継⑪借金過多のM&A
事業承継(M&A型)において、できるだけの策を実施して結果、借金過多になった場合、どのようになるのでしょうか。ポジティブ面とネガティブ面の分析から話をいたします。
(ポジティブ面)
「比較的若い経営者が、やるだけのことは実施して、もっと当該事業を有効活用してくれる企業に事業承継したい」「この事業をさらなる拡大をしてほしい」という思いです。
例えば、個人として事業はそれなりにうまくいっていたが、個人レベルだと数店舗が限界のところ、資金力がある企業に任せ世界規模への事業展開を考えれば、それなりの収益が見込める事業であると考えて、事業を手放すケースです。
(ネガティブ面)
業績悪化に伴い、どこかに救済してほしい。
→現実、非常に困難。よほど光るものがなければM&Aは成立する場合は稀。
法的整理も視野に入れた対応を迫られるケースになります。
①法的整理
- 民事再生なら経営者が残れる可能性もありますが、裁判所主導で実施されます。
- スポンサーが必要となります。
- 破産手続きなら、事業そのものがなくなります。
(通常は、社会的必要性に伴うものであり、通常民事再生は認められることは稀です。)
➁私的整理
- 法的整理にも増して、業績回復に関する信頼度の高さが求められます。
→金融機関等に個別に交渉して、借金の棒引きの交渉をすることになります。
また、破綻前の事業売却のリスクとして、「債務を引き継いでも欲しいビジネスはごくわずか」です。仮に、唯一お金を生んでいる事業を借金をしている金融機関に知らせることなく売却した場合、その金融機関に不利な取引となります。
この場合、債権者(金融機関)にとって不利な取引はM&Aでも、さかのぼって売却はなかったもの(無効)になります。
ですので、法的整理によることが大事になります。
(早めの決断の大切さ)
会社経営者において、虎の子のビジネスを他に売却する行為は、その後会社の倒産を意味します。社長の個人保証などあった場合、社長自身の自己破産も考えなければならなくなる決断だと思います。また、このような状況を察知した従業員の方たちも、できる方から先に辞めていく状況になると思われます。以前もお話いたしましたが、中小零細企業の技術・ノウハウは人についていることも多く、いざ売却となったとき、その人たちがいない状態での売却は、かなり難しいと言わざるを得ません。また、創業経営者の場合、自身だけでなく親戚等からの借金等で延命しても、結果倒産してしまう可能性があり、借金した先にも返せなくなるリスクも出てきます。
ですので、早めの決断の重要性を今一度、ご認識いただきたいところです。