「定款認証48」と「設立登記72」を目指して

2024年09月05日

2024年1月10日より、東京都と福岡県の公証役場において、定款作成ツール(日本公証人連合会ホームページ掲載)を使用して作成された定款に対し、48時間以内に定款認証手続き(いわゆる「48時間処理」)を完了させる新たな運用が始まりました。さらに、2024年9月20日からは、この運用が神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府の公証役場にも拡大される予定です。この措置は法人設立手続きの迅速化を目指したものであり、企業家や法人設立を目指す個人にとって利便性が向上します。加えて、2024年6月21日に閣議決定された新しい運用では、公証役場と法務局が連携して、48時間処理された定款を基に、法人設立手続き全体を72時間以内に完了させる「72時間処理」が導入されます。この運用により、法人設立までの時間が大幅に短縮され、迅速な事業開始が可能となるのが特徴です。※令和7年3月3日より、全国展開されることとなりました。

目次

1. 48時間処理の導入と拡大

2. 72時間処理の新たな運用

3. 背景と目的

4. 地域経済への影響

5. 利用者への注意点

6. 今後の展望

7. 追記(令和7年2月21日)


1. 48時間処理の導入と拡大

 2024年1月10日より、東京都および福岡県の公証役場において、日本公証人連合会が提供する定款作成ツールを使用して作成された定款に対して、48時間以内に定款認証手続きを完了させる新たな運用が始まりました。この運用は、法人設立手続きの迅速化を目的としており、特に事業を迅速に開始したい起業家にとって大きな利便性をもたらします。

 さらに、2024年9月20日からは、この48時間処理が神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府の公証役場にも拡大される予定です。これにより、首都圏や大都市圏を中心とした広範囲の地域で法人設立の手続きが迅速に進められるようになります。

2. 72時間処理の新たな運用

 2024年6月21日に閣議決定された新たな運用により、48時間処理された定款を基に、公証役場と法務局が連携して、原則72時間以内に法人設立手続きを完了させる「72時間処理」が導入されることになりました。この運用は、定款認証手続きに加え、法務局での登記完了までを含む法人設立全体のプロセスを効率化し、起業者に対してさらなるスピード感をもって対応できる体制を整えるものです。

 この72時間処理の導入により、スタートアップ企業や新規事業の立ち上げを目指す事業者は、事業開始までの時間を大幅に短縮することが可能になります。これまでの法人設立手続きでは、定款認証から登記完了までに時間がかかることが課題となっていましたが、行政機関間の連携とデジタル化により、この課題が解消されつつあります。

3. 背景と目的

 今回の48時間処理および72時間処理の導入には、近年の起業促進策やデジタル化の進展が背景にあります。従来、法人設立手続きには公証人による定款認証や、法務局での登記手続きに時間がかかり、特に起業のスピードが求められるスタートアップ企業にとっては、この遅延が事業開始の障害となっていました。

 政府はこうした課題に対応するため、IT技術の活用と行政機関間の業務フローの見直しを進め、法人設立手続きの迅速化を目指してきました。これにより、事業計画の立案から資金調達、市場参入までのスケジュールがスムーズに進行し、企業家にとって大きなメリットとなることが期待されています。

4. 地域経済への影響

 今回の運用拡大の対象地域は、東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、大阪といった大都市圏であり、これらの地域では多くの企業が集中しています。法人設立の迅速化がこれらの都市部で実現されることで、地域経済の活性化にも寄与することが期待されています。

 特に、スタートアップ企業やベンチャー企業が多く集まるこれらの地域では、迅速な法人設立手続きにより、新規事業の立ち上げがスピードアップし、競争力の向上につながると考えられます。さらに、公証役場と法務局が連携することで、各機関間の業務フローが簡略化され、行政手続きにかかる時間や労力が削減されるため、利用者にとっても大きな利便性がもたらされるでしょう。

5. 利用者への注意点

 このような迅速な法人設立手続きが導入される一方で、利用者側にも適切な準備が求められます。まず、定款作成時には、日本公証人連合会が提供する定款作成ツールを活用し、必要な情報を正確に入力することが重要です。定款の内容に誤りがある場合、再提出や修正が必要となり、手続きの遅延が発生する恐れがあります。

 また、法務局との連携をスムーズに進めるためには、提出書類にミスがないように十分に確認することが不可欠です。特に、48時間処理や72時間処理のスピードを最大限活用するためには、書類の不備を避け、迅速かつ正確な手続きを心がけることが重要です。

6. 今後の展望

 現在、48時間処理や72時間処理の運用は一部の地域に限られていますが、今後の展望として、これらの制度が全国に拡大される可能性があります。法人設立手続きのさらなる迅速化に向けて、行政機関間の連携やIT技術の活用が一層進むことが期待されています。

 また、こうした制度の拡大により、全国の起業家にとって、事業開始までのハードルが大幅に下がることが予測されます。法人設立にかかる時間が短縮されることで、ビジネスの立ち上げがよりスムーズになり、地域経済の活性化にもつながるでしょう。

 先日、久しぶりに株式会社設立のお仕事を受任したのですが、すでに導入されていたウェブ会議について、「原則、ウェブ会議利用」であり、ウェブ会議を使わない場合には、「ウェブ会議の利用を希望しない旨の申告書」の提供が必要となります。

7. 追記(令和7年2月21日)

令和7年3月3日より、本制度の全国展開の話と72時間処理の要件についての説明がありました。

「①  48 時間特 別 処理及び 72時 間 処理の全 国展開

  これまで は東京 都 、神奈川県 、埼玉 県、千葉県 、大阪 府、愛知県 及び福岡県の 公証役 場 に限定し て運用 さ れていま したが 、令和7年3月3日より、その他道府 県の公証役場で も利用 が 可能とな りまし た 。

 ➁ 72 時間処 理 の条件

  以下の条 件を満 た した場合 に、定 款 認証と設 立登記 を 併せて原 則72時間以 内に処 理 します( 定款認 証 を48時 間以内 に 、設立登 記を24時間以 内に行 い ます。)。

 なお、定 款認証 後 から設立 登記を 申 請するま での時 間 は72時 間には含まれ ません 。

  (1) 48 時間特 別 処理の対 象であ る こと。

  (2) 定款 認証後 1 週間以内 にオン ラ インで設 立登記 を 申請する こと。

  (3) 設立 登記申 請 の添付書 面情報 を 全て電磁 的記録 で 作成し、 登録免許税を電 子納付 す ること。」

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